研究概要 |
本研究では,中学校技術・家庭科「ものづくり」における基本的な加工技能である「のこぎりびき」を取り上げ,のこぎりびき技能の習得を支援する新たな指導方法の確立を最終目的とする。 本年度は,まず,力の配分を変えたのこぎりびき音の測定および初心者ののこぎりびき技能の向上に伴う,発生音等の変化を測定した結果,1)熟練者の発生音は,のこぎりを引くときの音のレベルが戻すときと比較して大きく,きれいなヒョウタン型の波形が連続する。2)強い力で切削を行うと,切削面の粗さが増加する。このときの発生音は,引くときの音に、突発的な大振幅音が複数又は引き始めに発生する。なお,繰り返し動作の周期は遅くなる傾向にある。3)弱い力で切削を行うと,切削面の粗さは減少する。このときの発生音は,のこぎりを引くときの音と戻すときの音のレベルがほぼ同レベルとなり,強弱のない音として聞こえる。4)のこぎりびきの指導方法としては,学習の初期段階で示範を行い,その後に加工動作,姿勢,力の配分などを必要に応じて指導する。その後に,力の配分を含めた加工動作のリズムに注目させて,もう一度を示範を行う方法がよいと予想される。 さらに,全国木工スキルコンテストの競技種目「のこぎりびき」に応募した中学生の作業映像と切断材料の分析を行った結果,のこぎりびき時の固定,姿勢,引き込み角度など基本的な項目ができていても,切断精度は不十分な場合が多く,その要因として,適度な力の入れ具合と安定した繰り返し動作を指導する必要があることが明らかとなった。また,この指導には理想的なのこぎりびき音の,音の強弱とその周期を意識させる指導方法が役立つ可能性があると思われる。
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