研究概要 |
1.はじめに:音声言語の表出が困難な言語障害児に対して,音声言語以外のマルチモーダルな手段により,コミュニケーション障害を補償するaugmentative and alternative communication (AAC)が活用されるようになってきている。しかし,その指導方法は,課題学習により,サインやシンボルなどの記号の習得をはかり,日常場面に般化させる方法が取られることが多く,課題学習にのりにくい発達初期の子どもへの適用が困難な面がある。そこで,本研究では,遊び場面など,より自然な場面で,AAC手段の習得をはかる指導を試みる。2.方法:(1)健常児の幼児期におけるコミュニケーション行動の発達について:健常幼児1例を対象として,2歳1ヵ月から4歳まで,遊び場面における母子の相互交渉をビデオカメラを用いて観察・記録し,コミュニケーション行動の様式,出現頻度およびコミュニケーション機能,母子間の相互作用の経時的変化を調べた。(2)指導の対象児である,ことばの表出に困難さを示す言語発達障害児6例のコミュニケーションの発達について評価を行った。3.結果:(1)健常幼児のコミュニケーション行動の発達についてはデータ整理・分析中である。(2)症例:男2例,女4例で,年齢は8〜17歳,6例とも中等度〜重度の知的障害を有し,運動機能障害または運動発達の遅れを合併していた。コミュニケーションの発達は,2〜3語文の音声言語の表出がみられるが,語彙が少なく構音障害のため了解しにくいものが3例,音声言語表出は一語文で数単語のみのものが3例であった。身振りサインを用いるものが5例,文字を習得しているものが4例みられたが,いずれも一つの手段では,十分に実用的なコミュニケーションは困難であった。4.まとめ:今後,複数の手段を併用し,個々の症例の興味・関心に沿った特定の文脈の中でコミュニケーション記号の意味の理解や使用を促進する指導を行って,指導方法と効果について検討する。
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