研究概要 |
本年度は,健常児の幼児期におけるコミュニケーション行動の発達を明らかにし,言語に遅れのある子どものコミュニケーションの発達指標を作成することを目的として,研究協力者とともに,健常幼児1例の2歳2ヵ月から4歳8ヵ月まで,遊び場面における母子の相互交渉をビデオカメラを用いて観察・記録した。今回は,2歳2ヵ月,2歳8ヵ月,3歳9ヵ月,4歳8ヵ月の4回について,コミュニケーション行動の様式,出現頻度およびコミュニケーション機能,母子間の相互作用め経時的変化を分析した。その結果,1.子どもの年齢とともに,対象児の発話量は,増加する傾向がみられ,母親の発話量は,徐々に減少した。2.発話・行動をトピックにわけ,各トピックのターン数を調べたところ,トピック数は減少し,各トピックにおける平均ターン数は,増加する傾向が認められた。3.コミュニケーション行動の様式は,2歳2ヵ月から3歳9ヵ月まで「発話のみ」および「発話+非言語行動」が増加し,「非言語行動のみ」が減少した。4歳8ヵ月においては「非言語行動のみ」が多かった。母親のコミュニケーション行動の様式は「発話のみ」が多くを占めた。4.母子のやりとりにおける相互関係を7種類に分類した。対象児は,いずれの年齢においても,「義務応答」と「任意応答」を合わせた「応答」が50%以上を占めた。また,年齢の増加に伴い,「義務応答」が増加した。コミュニケーション機能は「提供」が最も多くみられた。母親は,2歳2ヵ月時には「自己遡及」が多く,2歳8ヵ月から4歳8ヵ月時には,「任意応答」が最も多かった。コミュニケーション機能は「提供」,「請求」の出現率が多くみられた。対象児は,言語・コミュニケーションの発達に伴って,発話の占める割合が増加し,話題を維持することができるようになった。一方,母親は,子どもの年齢にかかわらず,子どもの発話や行動の開始を待って,やりとりを展開し,調整する役割を果たしていることが示唆された。
|