本研究プロジェクトの目的は、(1)日本の大学英語読解教育に適した多読法の開発と(2)日本人大学生の英文読解力向上に対する多読法の効果を調査・考察することである。研究プロジェクト初年度にあたる平成14年度は、多読法の設定条件の一つである「本(教材)の選択に対する学生の関わり方」を研究の焦点に置き、多読法の必要性について分析した。教師は教室外で読むことに対して、特に指示を与えず、各学生の自由裁量に任せる場合を設定した。尚、平成15年度の研究に必要な多読用英文テキストの補助教材の作成と教室外での読書活動をモニターするシステムの開発を行う予定であったが、ネットワークシステム上の制限から、コンピュータを用いた読解活動のモニター・システムを開発することはできなかった。 日本人大学生295名を対象に、(1)教室外での多読に関する意識、(2)英語学習に対する態度・動機、(3)英書の読書習慣、(4)教室内での読書(リーディングの授業)に対する意識に関して、36項目の質問項目からなるアンケート調査を行った。データは因子分析を用いて分析し、因子数は、固有値1以上の基準を設けた。主因子法を用い直接斜交回転を行った結果、「英語学習に対する自主的努力」(第1因子)、「英語力を伸ばしたいという願望」(第2因子)、「英語を読むことの楽しさ」(第3因子)、「大学の英語授業(リーディング)に対する不満」(第4因子)、「英語学習法に対する疑問・戸惑い」(第5因子)、の5因子が抽出された。これらの因子から、(1)英語力をもっと伸ばしたいという願望から、(2)留学等、具体的な目標を自ら掲げ、英語学習に励む姿が伺える。そして、(3)英語の雑誌や本を授業以外でも読んで楽しいと感じている学生が多いことがわかる。しかし一方で、(4)逐語訳中心のリーディングの授業に対して不満を持ち、(5)自分の英語学習法に対して不安・疑問を抱き、より効果的な英語学習法を模索し戸惑う、現在の日本人大学生の姿が反映されている。
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