研究概要 |
本研究では、(A)教室外での読書ペースのコントロール、(B)本の内容に関する理解度の確認と最終成績への反映、(C)多読用の英書(教材)の選択に対する学習者の関わり、という3つの多読法の設定条件を調整し、その効果を考察した。多読法による指導では、これらの設定は重要条件とされ、(A)教室外での読書ペースをコントロールすべきではない、(B)本の内容に関する理解度を確認したり、多読に関する活動を成績へ反映するべきではない、(C)多読用の書物は学習者自身が選ばなければならない、とされている(Day & Bamford,1998)。しかしながら、本研究において、これらの設定条件を変化させて、その影響の度合いを考察した結果、設定条件を変えても、多読法の効果に大きな影響を与えることは、ほとんどないことが明らかになった。むしろ、外国語学習では、多読法で一般に定められている設定とは異なる設定の方が、学習者にとって有益であることが示された。 第二研究課題であった「多読は日本人大学生の英文読解力の向上に繋がるのか」という点に関しては、本研究では明確な結論を導き出すことは出来なかった。多読法の設定条件の変化と英文読解力との関係を調査した結果、英文読解力を予測する要因には、多読に直接関わりの少ない要因が上位に選ばれる場合が多く、多読に関連した要因が選ばれた場合でも、その予測力は小さく、英文読解力の向上を推進する重要要因と結論づけることは困難であった。しかし、本研究で英文読解力の指標として用いたTOEFLのReading Sectionの得点が、多読の英文読解力の向上に対する指標として適切であったかという点については、賛否の分かれるところであろう。多読で読んだ書物の語彙や構文を反映したTailor-Made Testを用いることで、英文読解力の向上に対す多読の効果を、より直接的に示すことが可能であったのかもしれない。
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