研究概要 |
子どもの体力・運動能力の低下が続き,身体の発育・発達や健康づくりにおいて基礎的体力の向上が叫ばれている今日、その具体的取り組みとして学校における体育授業の改善が求められる。本研究は体育授業づくりのための基礎的研究として、基礎的体力が反映すると考えられる足裏の形状と直立姿勢時の加重の仕方について小学校児童の実態を把握すると共に、運動による心拍数・血圧及び皮膚血流量の変化から運動の及ぼす身体への影響を追究することを目的とした。 足裏の測定結果から小学校児童の土踏まずの形成の遅れと、直立姿勢時の加重の仕方に問題的状況がみられることが明らかになった。土踏まずの形成率は、小学校6年間に漸次高くなっていくものの、6学年時の形成率は80%程度である。また、直立時の加重の仕方については、両足裏全体に加重した正常な立ち方と判断できる児童の割合も学年段階に沿って漸増の傾向にあるが、高学年にあってもその割合は半数程度である。 土踏まずの形成及び加重の仕方と体力評価とには相関関係は認められないが、運動部に加入している児童に土踏まずの形成と加重の仕方が良好な者の割合が高い傾向が認められ、土踏まずの形成及び加重の仕方の改善は日常的な運動経験との関連が考えられる。そのことから体育学習における基礎的な体力づくりの重要性と内容の検討の必要性が示唆された。 身体に及ぼす運動の影響について、縄跳び運動・ボールゲームにより最高血圧は上昇し、最低血圧には変化がみられないことが認められた。運動前後の皮膚血流量にも有意な差が認められ、運動種目によって皮膚血流量の増加率に違いが生じる可能性がみえてきた。水泳については、少ないデータによるものではあるが、運動によって最高血圧・最低血圧ともに低下し、皮膚血流量は大幅に上昇するという結果を得た。体力づくりにおける運動の効果や指導上の留意事項として他の教材とは異なる特別な配慮の必要性があるのではないかと考えられ、さらにこの点について追究の必要がある。
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