環境問題は現代の最も重要な社会的関心事であると同時に教育的な課題である。これを様々な形で教育の中に取り入れていくことが求められている。本研究では、地球温暖化問題を数学教材として扱うための数学的な手法、内容と数値的な基礎を示すこと、および実際のデータを用いた様々な数学教材を開発することを目的とした。地球温暖化については、二酸化炭素の増加とその温室効果が注目されている。本研究では、この二酸化炭素の循環に焦点をあて、それをシステムダイナミックのプログラム言語を用いて視覚的にも分かりやすく表現することを試みた。分析対象としては、「IPCC報告書」とその中心メンバー等が表した「Climate System Modeling」を主に用い、関連する資料を参照した。その結果、二酸化炭素の循環については、IPCCで採用されたモデルをもとに、大気、土壌、腐葉土、樹木、低木草、海洋、人為的な排出源などの相互の関連性とその数値的表現を取り入れて、より単純化したモデルを、ithinkソフトを用いて表現することができた。とりわけ海洋モデルは、低温の高緯度、高温の低緯度上層、低緯度内部の多層をそれぞれ1つの炭素貯蔵庫とし、それらが相互にあるいは大気等と炭素を交換する様相が表現されている。今回の二酸化炭素の循環モデルは、連立常微分方程式系として表現されており、手元の計算機環境でもシミュレーションできるものである。内容的には高校から大学への応用数学教材として利用可能である。ただこのモデルは、二酸化炭素の全球的な移動を概略表現しているが、生物圏の複雑な作用、温暖化との連携などをうまく表すことまではできていないなど多くの改善すべき点を含んでいる。しかし、数学の生きた教材としての利用は十分可能である。また、この研究を通じて応用数学として利用可能な微分方程式、フーリエ級数に関する教材を開発した。
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