地球環境科学は現在多方面から関心が持たれている。その中でも二酸化炭素の増加とそれにともなう地球温暖化はグローバルな課題である。しかし、科学的な議論としてその因果関係を量的に表現し調べることは普及していない。私たちは科学教育、応用数学教育として地球環境科学を取り入れることを試みてきた。この3年間の研究の中で(1)二酸化炭素の循環を、システムダイナミックソフト「iThink」を用いてモデル化した。これは、IPCCで採用されている数値を利用することにより作成できた。このモデルは小さなコンピュータで動くもので、パラメータの変更がきわめて容易であること、全体の関連が視覚的に分かりやすいことがその大きな特徴となっている。炭素の各貯蔵庫とその間の年間の移動量、移動率を定量的に表したBoxモデルを採用し、1年ごとの変動をシミュレートしていくことができる。(2)現在の温暖化予想では、計算手法としてスペクトル法などが用いられている。実際は高速フーリエ変換が行われている。私たちは、離散フーリエ変換をもっと活用する必要があると考えて、声の分析をグラフ電卓を用いて行う教材を開発した。この成果はICME10(2004)において行った。また、文部科学省「サイエンス・パートナープログラム」として、高校教員研修講座(2004年8月東京都、12月福井県)で講習なども行った。(3)地球温暖化に関連する諸科学の中からの教材選定作業は、CLimate System Modeling (Kevin E. Trenberthe、1992)の分析を中心に行ってきた。(1)のモデルはこの成果の反映である。全体としてはまだ十分な分析の量と質になっていない。範囲を限定して二酸化炭素の循環、生物圏の挙動について主に取り上げてきた。
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