本研究は、教材開発にむけた基礎的研究として、外国人日本語学習者が日本語のいわゆる「女ことば/男ことば」をどのように受け止め、運用しているかを、ジェンダー意識との関連において検討し、教育内容の改善に資するデータを提供することを目的とするものである。研究の第1段階として、母語が語形式に顕著な男女差が現れない言語である中国語話者と、文構造が日本語により近い韓国語話者の日本語学習者をおもな対象として調査研究をおこなった。当該研究期間においては、研究実施計画に沿って、おもに以下の4点をおこなった。 (1)先行研究および中国・韓国の主要な日本語教材の「ことばの男女差」に関する記述を整理し、検討した。 (2)中国・韓国の大学6機関において2種類の調査(親しい友人同士の条件付き会話文の作成/母語及び日本語の男女差に関する認識等のアンケート調査)を実施した。 (3)調査結果をデータベース化し、収集したデータの分析・考察をおこなった。 (4)研究成果の発表(論文発表、口頭発表、講演)および報告書のとりまとめをおこなった。 アンケート調査の結果から、現段階でおもに以下の4点が明らかになった。 (1)中国人学習者は、韓国人学習者よりも日本語の男女差を強く感じ、かつ肯定的に評価している。また、性差表現の学習にも韓国人学習者より意欲的であること (2)中国国内で学ぶ中国人日本語学習者の作成した会話文は、普通体と丁寧体を混用させたものが多く、中国人日本語学習者にとって聞き手との心的距離に配慮した適切な文体選択が困難であること (3)中国人学習者も韓国人学習者もメディアを通した日本語との接触度は比較的高いが、来日経験に大きな差が見られること (4)日本人との接触度は、韓国人学習者よりもむしろ中国人学習者のほうが高いが、普通体会話の運用には結びついていない。
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