研究概要 |
本研究は,高校入試問題を解く力はあるが,日本語力の不足から設問文の指示内容の理解が不十分なため得点に結びつかない外国人生徒のために,設問文理解のための語彙や表現の分析を行い,入試対策に役立てようという目的で行っているものである。 平成14年度には,英語の入試問題について全国高校一般入試問題(2002年)の設問部分を分析した。英語の出題形式による特徴,外国人生徒の視点からの「選ぶ/日本語で書く/英語で書く/並べ替える/( )に入れる/完成させる/抜き出す/区切る」の8解答形式においてどのような語彙・表現を必要とするかを問題を直接解いてみる質的分析とコンピュータによる量的分析によって考察し,外国人生徒の入試準備として必要な語彙・表現を特定できた。 平成15年度は,数学の入試問題について全国高校一般入試問題(2002年)の設問部分を分析し,研究している。まず,設問文をコンピュータ入力し,上述の英語の分析方法にならって13の出題項目(例,数・式の計算/平方根/方程式・不等式/関数/確立・統計/図形の合同など)に分け,手作業によって実際に日本語力が弱い場合,どの程度解答できるかを確かめつつ,質的分析を行い,その結果をコンピュータソフト「茶筅」による量的分析で補完する方法をとっている。数学では,基本的な計算問題等でのケアレスミスに気をつけることで4割は得点できる。しかし,指示された答え方に従っていなければ,得点できない。各設問項目ごとに「何を」「どうする」という視点から答え方の指示を分析した。分析の結果,文章題では,英語のように出題形式ごとに,ある一定の表現を理解しておれば,得点可能というものではなく,出題項目ごとの専門用語をしっかり理解し,読み取る力が必要であることが判明した。英語では,設問文の理解ができなくても,本文(英文)理解は,可能であったが,数学の文章題では,全て日本語表記なので,日本語力への依存度が高く,専門用語と指示された答え方の理解が不可欠であることがわかった。
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