本研究は、主に論述文を代表とする論文を分析対象とし、分野を超えた論文に共通する機能語句群を明らかにし、最終的には論述文に代表される文章の論理構造を明示する機能語句群を確定することを目標としている。それにより、専門日本語教育における教材開発のための文型の客観的な基礎的資料が提示でき、教授法の改善に寄与することができると考える。 今年度は、昨年度に引き続き、論文の論理構造を観るために、論文を構成する3つの大段落(序論、本論、結論)ごとの機能語句をはじめとする文型115項目の使用頻度の傾向を調査した。対象資料は自然科学分野から工学論文を選んだ。具体的には昨年度と同様の手法を用いている。中・上級文型に含まれる機能語句(接続語句・助詞相当句)をはじめとする115文型項目(含漢語項目)の文章中の各使用頻度を求め、一文当たりの頻度に換算した値を各語句項目の出現率とし、各論文資料の大段落ごとに全数調査を行った。なお、出現率を調べるにあたっては、用字の差異、活用変化の形を同一視して同じ語句項目として扱った。調査の結果、昨年調査した物理学論文の結果と同様、論述文を支える3つの柱である「並列」「対比」「因果」に属する文型(含機能語句)は頻度が高いものが多く、さらに、3つの大段落に共通して頻度が高い項目もあれば、大段落間で頻度に特徴的な差異を有する項目があることがわかった。さらに、「並列」「対比」「因果」に属する個別の文型について、その意味機能の観点から昨年度の調査結果と比較対照した。
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