研究概要 |
平成8〜9年度の科学研究費補助金研究において,第二言語としての日本語学習者および英語学習者の多様性を,学習者集団の特性としてではなく,学習者一人ひとりの学習過程の「個別性」としてとらえ,一人ひとりの学習過程にかかわる諸要因とその相互作用を示す枠組(モデル)の提示を試みた。 本研究では,先に示した枠組(モデル)の再構築を目的としているが,本年度は,最新の第二言語習得研究の動向をふまえ,言語学習の個別性に関する理論的枠組を中心とした文献研究を行った。最近の研究では,「学習者の声」,「学習者のアイデンティティ」など学習者に焦点を当てた研究が増えている。世界各地で多言語・多文化状況における言語教育が求められている現在,社会文化的背景が学習環境および学習者へもたらす影響を理解することは,重要な課題となっている。また,第二言語学習を「言語の習得」と見ることに加えて,「社会への参加」とする見方が広まっている。状況学習論,社会文化的アプローチなど関係性を重視する方向性の研究が求められる。 新しい研究動向を背景とした,日本語教育,英語教育および関連分野の具体的な研究を,学会誌,紀要,雑誌論文などから収集し,分析する予定であるが,本年度は,大枠の設定に留まった。実質的な収集,分析作業は次年度の課題とする。
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