時空間データ分析の理論として、時空間データ相関構造の検定法を提案し、実データ等への応用として、fMRIデータ解析および地価データの分析を行った。 時空間データの相関構造の検定とは、2種のスペクトルを考え、どちらのスペクトルがデータにふさわしいかを定めることである。今年度の研究では、2種のスペクトルとして多くの応用可能性があるクラスを考え、択一を行う統計量をカルバック・ライブラーの距離を導入することで考案した。この検定統計量により適用可能な例として、複数の系列間の因果性の分析がある。さらに、統計量の漸近分布を導出し、検定手順を確立した。 実データヘの応用では、まずfMRIデータヘ時空間データ解析法を適用した新しい分析法を提案した。そこでは誤差が時空間モデルにしたがう回帰モデルを提案し、誤差の相関構造をノンパラメトリックに扱って回帰係数を推定する方法を使った。この方法を実際のfMRIデータに適用してみた結果、有効な方法であることが確かめられた。 最後に地価データ分析を行った。関東一円の16851地点の2001年度公示地価データを収集し、商業施設、公園・緑地の地価への効果を回帰分析により測定した。標本地点間の相関関係をどのように表現するかが課題であるが、ここではfunctional-coefficient regression modelという非線形回帰モデルを適用し、相関関係を表現した。この非線形回帰分析により、土地利用面積の地価への効果と標本地点からの距離の関係を分析した。
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