本研究は時系列データからフィードバック構造を活用して動的情報を引き出す統計的逆問題と、をれを複雑系(大脳の機能解明とかプラントの診断)に応用する研究である。 20世紀までの脳科学で大脳に機能局在があることが分かっている。言語活動等の高次脳機能は複数の脳領域の活動であるため、今世紀は大脳の機能関連に興味がもたれている。さらに、この機能関連は時間的構造を有しているので、そのダイナミックスの理解が待たれている。この理解の方法の1つとして当研究室育ちのフィードバックシステム論的手法を応用することにより脳磁図データからダイナミックスが少しでも理解できればと思っている。脳磁図データとは脳活動の集団ニューロンの動的電流が発生する微弱磁場を計測されたものである。 本手法ではデータを直接扱わずその相関データを解析するために、この手法の特徴はデータがあればそのダイナミックスが解析できるのではなく、データ自身が解析の有効性を決めている点にある。逆に、脳磁図データからダイナミックスを理解できる領域間とは脳が見せてくれる部分だけである。さらに、本手法によって大脳部位間の関連性が理解できるものと思っていたが、実際データ解析してみると脳は並列分散処理しているために解析された部位間の関連性は多要因の積み重ね結果であり、それを読み解くことが当初困難であった。そこで、独立成分解析なる最新流行の手法を併せ用いることにより、正中神経の繰り返し刺激のような周期的独立要因を抽出すればダイナミックスを読み解けるのではないかと言う希望がもてるようになった。
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