高次脳機能を調べるために無侵襲の脳磁図解析は適していた。例えば、言語活動を調べるためにはBroca野とWernicke野の部位間の連関を見いだすことが今後重要な仕事として期待されている。さらに、定常な脳磁図データの度数分布はガウス分布となるためにこれまでの研究で開発したフィードバックシステム論的手法が適用できる複雑系としての対象の一つとして脳磁図が有望となった。 ところで、大脳は並列分散処理しているために、活動部位間の関連性は多要因の積み重ね結果であり、その電気活動から生じた脳磁図データを読み解きことは当初困難と思われた。しかし、昨年度に用いた独立成分解析なる手法を前処理として用いることにより、独立要因毎に時系列データを分類すれば脳の部位間の関連性を統計的逆問題として読み解けることが分かった。つまり、体性感覚の繰り返し刺激の脳磁図データを調べることにより、手首の正中神経刺激が対側大脳の体性感覚野にまず20msecで届き、その後、同側の体性感覚野に脳梁等を経由して10msec程度で届いている可能性があることがフィードバックシステム論的手法を用いることから分かった。そこで、この成果を独立成分解析の国際会議と生体磁気学会で発表した。 さらに、聴覚の繰り返し刺激の脳磁図データを調べることにより言語活動の連関を調べるためにはBroca野とWernicke野に相当する部位間の動的特性を示す伝達関数を見いだした。
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