研究概要 |
k個の母集団の同一性に対する従来の検定は,それぞれの母集団内からの標本は独立,同一分布であるという仮定の下に,k個の母集団の同一性の検定法として構成されている.一つの母集団内からの標本の分布が近似的に同一であることしか成立しないような場合,その検定は同一性の仮定からのずれに対して大きな影響を受け危険であり,このずれに対しロバストな検定を考える必要がある.そこで,すべての標本が近似的に同一な分布に従うという帰無仮説を持つ近似的同一性の検定問題を考えた。 k標本近似的同一性の検定問題において,Riederが与えたε-contamination近傍やtotal-variation近傍を含む近傍を用いたとき,k標本順位検定の漸近的有意水準の上界と漸近的険出力の下界を,マジョライゼーションおよび弱マジョライゼーションの順序を用いて与えた。このとき,k標本順位統計量のマジョライゼーション不等式を与えた。これらの結果を用いて,k標本近似的同一性に対する順位検定のロバスト性の研究を行った。 多重決定問題としての従来のスリッペイジ検定問題に対し,k個の母集団分布が同一の近傍に入るという帰無仮説,1個の母集団分布が他の母集団分布が入る近傍には入らないというk個の対立仮説を持つロバスト・スリッペイジ検定問題に拡張し,ノンパラメトリックな観点から、順位統計量に基づく検定法を構成した.この結果は,従来の問題定式化とその検定法などに対し,ロバスト性を保証する検定法であることが云えた。 多標本近似的同一性の検定問題において提案される検定法のロバスト性を評価する際に,マジョライゼーションや弱マジョライゼーションによる評価の有効性は、今後も引き続き研究されねばらない課題である。
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