研究概要 |
確率母数に順序制約がある場合に,これらの母数あるいはその関数を推定する問題で,不偏な推定量もしくは,偏りをできる限り小さくできるような推定量を構成したい.特に本研究では,ブートストラップ法に基づく推定量の構成に注目した.そのような問題の背景として,母数に順序制約を仮定した場合の赤池情報量規準(AIC)のバイアス補正項の推定問題がある.本研究は,科学研究費補助金「順序情報と情報量規準についての研究」(基盤研究(C)(2))を継承し,より一般的な問題解明を目指そうとするものである.AICのバイアス補正項の推定に際しては,バイアス項を生ずる統計量を,ブートストラップ法により直接構成する方法が考えられるが,この方法では,偏りを生じる.これに対して,最尤推定値のうち,異なる値の個数で推定する方法によれば,不偏な推定量を構成できる.もし,ブートストラップを行わずに,データから得られる推定値をそのまま使えば,推定量はバイアス項の不偏推定量となるが,残念ながら分散が大きく不安定である.昨年度の報告では,ブートストラップ法でも不偏な推定量が得られる考えていたが,この点は修正を要することが判明した.また一方,文献調査により,このような場合の改善策のひとつとして,標本数nの重複対数loglognのオーダーでの修正法の可能性があることがわかった.またブートストラップ法において,再抽出する際の標本サイズに制約はないものと当初考えていたが,むやみに大きくする方法は,うまくいかないことも判明した.再抽出する際の標本サイズは,大標本の場合,ブートストラップ法における抽出標本数mを,ある制約条件を満たすように,元々の標本数nより少さくとることで,漸近的に不偏な推定量の構成ができるであろうこともわかってきた. 本研究期間は終了したが,これらの点を検証し,早急に論文にまとめたい.また併せて,広く応用の可能性を模索したい.
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