研究概要 |
近年ますます高性能化が要求されているデータ圧縮のための新たな方法として,データを記述する文法を導出し,データそのものの圧縮にかえて文法を圧縮する「文法法」が注目されている。本研究では,導出した文法の記述と具体的な符号化法を中心に,文法法の基礎理論から実装までを検討した。 まず,導出した文法がグラフ構造であり,グラフのあるクラスに対してカノニカル構造が定義できるという既存の知見を基礎に,カノニカルグラフの記述法を検討した。続いて,カノニカルグラフの符号化のための新たな再帰時間符号化方式の提案を行った。提案方式は,順序集合としてのアルファベットの特性を積極的に利用する方法であり,本研究ではその理論的な解析,および再帰時間符号化の従来法との比較を試みた。さらに,文法法を実装し,DNA塩基配列データの圧縮に応用した。その結果,DNAの特徴を文法記述にある程度反映させることができた。 一方,補足的な事項として,無ひずみデータでのデータ埋め込みについても基礎的な検討を開始している。その応用として自己埋め込みという概念を提案し,自己埋め込みによる圧縮力の向上を確認した。今後は,セキュリティ面での応用を開拓する計画である。
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