研究概要 |
近年,ネットワーク速度の高速化が進み,1Gbit/sを越えるネットワークインタフェースを容易に入手可能となった.それに伴いPCクラスタ間でのネットワークを用いた通信に要する時間も短縮されてきている.しかし,従来の分散共有メモリシステムのようにオンデマンドに他計算機のメモリアクセスを行う場合は,通信の初期レイテンシが依然として大きな問題として残る.そこで本研究では高速なネットワークを利用し,共有メモリ領域をPCクラスタ間で常時転送状態とし,各計算機はその時刻に保持しているメモリ領域を用いた処理を行うという計算モデルに基づく新しい概念の分散共有メモリモデルを提案し,ギガリングクラスタを用いて実装評価を行った。まず、常時転送型共有メモリを構成するAPI(アプリケーションプログラムインターフェイス)を設計するとともに、設計に基づくランタイムライブラリの構築を行った。さらにそのライブラリを用いて代表手的な並列演算問題である、行列積についてベンチマークを行った。その結果、従来のMPIなどの通信ライブラリに比べて、通信部分の記述がない非常に簡潔なプログラムで、プログラムが記述可能であり、しかも8台までの線形かつオーバヘッドがほとんど無い台数効果を確認できた。次に、電磁界計算FDTD法によるベンチマークを行った。この問題は通信量が非常に多く、1GBPSの通信速度では行列積ほど十分な性能向上ができなかったが、8台で5倍程度の台数効果を確認できた。また、この性能低下の原因を考察し、数GBPSの転送能力を有する専用ハードウェアを構築することにより、十分な台数効果が期待できることも確認した。
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