グラフ・ネットワーク・離散幾何学におけるアルゴリズムの研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14580373
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 伊藤 大雄 京都大学, 情報学研究科, 助教授 (50283487)
• 研究分担者: 岩間 一雄 京都大学, 情報学研究科, 教授 (50131272)
• キーワード: グラフ / ネットワーク / 配置問題 / 連結度 / インターネット / ルーチング / ファイル転送 / 最短路

研究概要

1.供給点配置問題
供給点配置問題に対し、グラフG=(V,E)が有向グラフで、制約条件が枝連結度λ(S,x)≧k(x∈Vは任意の節点、S⊆Vは供給点の集合)である問題に対し、kが定数の場合の多項式時間アルゴリズムを既に得ていたが、これを、両方向の制約を同時に満足させる問題に拡張した、すなわち、制約条件がλ(S,x)≧kかつλ(x,S)≧hである様な問題に対し、kとhが定数の場合の多項式時間アルゴリズムを得た。
2.設備故障に強いインターネットルーチング方式
インターネットにおけるルーチングにおいて、設備故障や過負荷などでネットワークリソースの情報が変化した場合、ノード毎にその変化情報を受け取る時間差が原因で、別のノードで計算した経路間に矛盾が生じ、データがループを回り続けてしまうことがある。これは「ルーチングループ問題」と呼ばれている有名な問題である。この問題に対し、ネットワークリソースの変化情報を段階的に流すことによって、ループが起きない様にする手法を提案した。ここで提案する手法は、流す段階数が最小であることが保証されている。また、段階数の厳密な上限も求めた。この手法は現在のインターネットルーチングのアルゴリズムをほとんど変えることなく適用することができる。
3.ファイル転送木問題
グラフG=(V,E)の各節点x∈Vに対して出次数の上限値d(x)が与えられ、その制約の下での最短路木を求める問題は、通信ネットワークにおけるファイル転送に応用を持つ重要な問題であるが、これまで理論的に扱われることは無かった。我々はこの問題に対し、O(m^<1.5>)時間のアルゴリズムを与えた(mはグラフの枝数)。さらに次数制限や経路長制限を緩和した種々の問題を考え、それぞれについて多項式時間アルゴリズムを与えるか、もしくはNP困難であることを示した。

研究成果

• [文献書誌] H.Ito, M.Ito, U.Itatsu, K.Nakai, H.Uehara, M.Yokovama: "Source location problems considering vertex-connectivity and edge-connectivity simultaneously"Networks. Vol.40. 63-70 (2002)
• [文献書誌] Hiro Ito: "Sum of edge lengths of a multigraph drawn on a convex polygon"Computational Geometry. Vol.24. 41-47 (2002)
• [文献書誌] H.Ito, H.Nagamochi, Y.Sugiyama, M.Fujita: "File transfer tree problems"Lecture Notes in Computer Science. 2518. 441-452 (2002)
• [文献書誌] D.Manlove, R.Irving, K.Iwama, S.Miyazaki, Y.: "Hard variants of stable marriage"Theoretical Computer Science. Vol.276. 261-279 (2002)
• [文献書誌] H.Ito, K.Iwama, Y.Okabe, T.Yoshihiro: "Avoiding routing loops on the Internet"Theory of Computing Systems. (掲載予定). (2003)
• [文献書誌] H.Ito, K.Makino, K.Arata, S.Honami, Y.Itatsu: "Source location problem with flow requirements in directed networks"Optimization Methods and Software. (掲載予定). (2003)