研究概要 |
本年度は下記の2つについて研究を行った。 A)曲線(面),面構造に関する研究 本年度は,まず自動車以外の曲線として,人形の顔の造形に用いられる曲線の分析を行った。具体的には,フィギア,日本人形,およびリカちゃん人形の顔の造形にはどのような相違があり,また人の顔と比較することによりどのように人の顔を抽象化しているかを明らかにした。まず,人や人形の顔の形状を3次元計測し,それらにおける曲率半径とその変化の仕方の分析結果と,高速フーリエ変換による曲率半径の周波数分析からそれぞれの顔の特徴分析を行った。その結果,それぞれの人形の特徴を作り分けることができ,その指針の有用性を確認した。 さらに,自然造形物と工芸品における曲線を前年度以上に広く採取するとともに,それらを分析し,どのような性質であるのかを明らかにした。工業製品として自動車のインテリアを,自然造形物として蝶における曲線をそれぞれ50本以上抽出し,それらの性質の比較を行い,どのような特徴があるのかを分析した。その結果,蝶における曲線は,筆者らが体系化した曲線群の中の「発散型」と「定速型」が大半であった。また,自動車のインテリアにおける曲線には,「収束型」が多く存在し,人工物と自然造形物における曲線の違いが推察された。 B)システムの推論部に関する研究 自動車のフロントマスクデザインをケーススタディとし,ラフ集合を用いて形態要素とイメージとの関係を明らかにし,デザインコンセプト立案への応用を試みた。以下の3つに関して研究を行った。1)ラフ集合による縮約と数量化瑛論第II類との推論結果比較を行った。2)縮約併合アルゴリズムによるデザインシミュレーションを行った。3)多人数における縮約併合アルゴリズムの開発を行った。その結果,ラフ集合によって得られる縮約やそれら縮約の併合により,デザインコンセプトへ用いることができる知識の獲得が可能であることが考察された。
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