計算困難な問題への混成アプローチ:近似、並列化、randomization

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14580390
• 研究機関: 東京電機大学
• 研究代表者: 陳 致中 東京電機大学, 理工学部, 助教授 (00242933)
• キーワード: 蛋白質NMRピーク割り当て問題 / 近以アルゴリズム / 発見的手法 / NP困難性 / 二部マッチング問題 / 分岐限定法 / 貪欲濾過法

研究概要

主に、NMRによる蛋白質の構造解明のために解決しなければならない「蛋白質NMRピーク割り当て問題」の近似アルゴリズムを三つ設計して比較した。1つ目のアルゴリズムは近似率2、2つ目のアルゴリズムは近似率3logDを達成する(Dは一番長いスピン系のセグメントの長さ、通常10以下)。理論的には、一つ目のアルゴリズムが二つ目のアルゴリズムよりよい。しかし、実際の蛋白質NMRピークのデータに対して実験を行った結果、二つ目のアルゴリズムの方がよいことがわかった。どちらのアルゴリズムも計算速度が速い。一方、3つ目のアルゴリズムは発見的手法によるアルゴリズムであり、近似率と計算時間に関して理論的な保障は何もない。しかし、実際の蛋白質NMRピークのデータに対して実験を行った結果、このアルゴリズムは今までのアルゴリズムの中で一番良い解(割り当て)を出してくれるし計算速度もそれなりに悪くないことが分かった。このアルゴリズムは基本的に分岐限定法に基づいている。ただし、枝刈りには1つ目と2つ目の近似アルゴリズムを用いている。さらに、分岐限定法を使って解を探していく前に、「食欲濾過法」という新しいテクニックを使ってある程度長いスピン系のセグメントをすばやく食欲的に割り当てていく。こうすると、分岐限定法で割り当てなければならない対象は短いスピン系のセグメントのみで、探索しなければならない空間がだいぶ小さくなる。そのため、このアルゴリズムの計算速度はそんなに悪くはない。食欲濾過法を使ってある程度長いスピン系のセグメントをすばやく食欲的に割り当てていっても、求まる解(割り当て)がそんなに悪くならない理由として、以下の観察がある:蛋白質NMRピークの割り当て問題において、長いスピン系のセグメントの割り当てがほぼ唯一である。この研究はまだ進行中で、もっとよいアルゴリズムの開発を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Zhi-Zhong Chen: "Computing Phylogenetic Roots with Bounded Degrees and Errors"SIAM Journal on Computing. (In press).
• [文献書誌] Guohui Lin: "Computational Assignment of Protein Backbone NMR Peaks by Efficient Bounding and Filtering"Journal of Bioinformatics and Computational Biology. (In press).
• [文献書誌] Zhi-Zhong Chen: "Approximation Algorithms for NMR Spectral Peak Assignment"Theoretical Computer Science. (In press).
• [文献書誌] Zhi-Zhong Chen: "Common-face Embeddings of Planar Graphs"SIAM Journal on Computing. 32・2. 408-434 (2003)
• [文献書誌] Guohui Lin: "The Longest Common Subsequence Problem for Sequences with Nested Arc Annotations"Journal of Computer and System Sciences. 65・3. 465-480 (2002)
• [文献書誌] Zhi-Zhong Chen: "Tight Upper Bound on the Number of Edges in a Bipartite K_<3,3>-free or K_5-free Graph with an Application"Information Processing Letters. 84・3. 141-145 (2002)
• [文献書誌] Zhi-Zhong Chen: "Map Graphs"Journal of the ACM. 49・2. 127-138 (2002)
• [文献書誌] Zhi-Zhong Chen: "Finding Double Euler Trails of Planar Graphs in Linear Time"SIAM Journal on Computing. 31・4. 1255-1285 (2002)
• [文献書誌] Zhi-Zhong Chen: "Better Approximation Algorithms for NMR Spectral Peak Assignment"Lecture Notes in Computer Science. 2452. 82-96 (2002)
• [文献書誌] Guohui Lin: "An Efficient Branch-and-Bound Algorithm for the Assignment of Protein Backbone MAR Peaks"Proceedings of the 2002 IEEE Computer Society Bioinformatics Conference. 165-174 (2002)