研究概要 |
絡み目の多項式不変量を決定する問題及びその最高次数を決定する問題の計算量を,絡み目を制限しない場合,適当な制限を行った場合などで詳細な分析を行い,古典的な数え上げの計算量クラスとの関連及ぴ量子計算量クラスとの関連を解明することが本研究の目的である.以下に,本年度の成果をまとめる. 研究代表者らはarborescent linkに対する多項式時間アルゴリズムを既に構成し,その理論的な解析を行っていた.このアルゴリズムを実装し本研究経費で導入したワークステーションを用いて,計算機実験を行った.その結果,標準的なダイアグラムに表現された2橋絡み目ダイアグラムとclosed 3-braid絡み目ダイアグラムが入力されると,それらのジョーンズ多項式を線形時間で決定するアルゴリズムを開発することに成功した. また,当初の研究計画に含まれていなかったが,絡み目の自明性判定問題の計算量解析を行った.1997年に,Hass-Lagarias-Pippengerは結び目理論,絡み目理論における様々な決定問題の計算量を解析した論文を発表した.その中で3次元球面内の結び目の自明性判定問題がNPに含まれることを証明し,この問題がNP ∩ co-NPに含まれるだろうと予想した.HassはAlgo, Thurstonと共同で結び目の自明性判定問題を含む一般の3次元多様体における種数判定問題がNP-完全であることを証明した.本研究では自明性判定問題の補問題である非自明性判定問題を解く対話型証明系を構成し,この問題がIP(2)に含まれること,つまり,自明性判定問題がAM∩co-AMに含まれることを示した.このことから,自明性判定問題がNP-完全ならば多項式時間階層が第2レベルまで崩壊することになり,自明性判定問題はNP-完全ではないと予想される.
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