研究概要 |
絡み目の多項式不変量を決定する問題及びその最高次数を決定する問題の計算量を,絡み目を制限しない場合,適当な制限を行った場合などで詳細な分析を行い,古典的な数え上げの計算量クラスとの関連及び量子計算量クラスとの関連を解明することが本研究の目的である.昨年度は1)2橋絡み目と閉3-ブレイド絡み目に対して,ジョーンズ多項式を線形回の多項式演算で決定するアルゴリズムを開発,および、2)自明性判定問題の補問題である非自明性判定問題を解ぐ対話型証明系を構成し,結果として,自明性判定問題がAM ∩ co-AMに含まれることを証明した.これらの成果を基礎に,本年度は主に次の研究成果を得た.a)2橋絡み目と閉3-ブレイド絡み目に対して,与えられたダイアグラムがそれらの標準的なダイアグラムであるかどうかを認識する線形時間アルゴリズムを開発した.b)ブレイド群における共役問題の計算量の上界としてこれまで指数時間のものしか知られていなかった.本研究ではこの問題がPSPACEに属することを証明した.また,canonical lengthがlでinfimumが0のブレイドの標準形をランダムに生成するスキームを提案した.このことにより,有効な計算機実験が行えるようになった.c)2次元格子グラフならびに超立方体グラフの部分グラフに関して,self-avoiding walkの本数を数えることを目的とした多種類の問題を考え,それらの問題が#P完全や#EXP完全になることを示した.これらの結果は,self-avoiding walkの数え上げ問題に関する計算量を示した初めての結果である.
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