研究概要 |
コンピュータグラフィックス(CG)の研究分野においては,従来より行われているphotorealistic rendering (PR)研究とともに,non -photorealistic rendering (NPR)に関する研究が注目されている.NPRは科学的可視化技術への応用とともに美術・芸術作品のCGによる表現手段として,絵画,油彩画,水彩画,等をはじめとして多くの研究が行われてきた.木版画と銅版画は,その制作過程が他の芸術とは異なる側面を持つ.すなわち単なる二次元の画像としてのみではなく,その制作行程では三次元の情報を持つ版木/銅版という媒体の存在である. 本研究第一の課題として,浮世絵の知的符号化の基礎技術として物理モデルに基づく絵の具の重ね塗りの解析を行った.多層に塗られた水彩絵の具の観測色を定める粒子密度モデルを導入し,色合成のモデル化と,その逆問題として色分解,すなわち与えられた重ね塗り画像を元にして,色分解を行う手法を検討した. 本研究第二の課題として,これまでに培われてきた木版画合成の技術を土台として,鍋版画への応用を試みた.銅版画は欧州を中心として中世以後に発達した凹版技法である.その中でもとくに版面のまくれとそれによる滲みが特徴的なドライポイントに注目した.版面をハイトフィールドで表現し,顕微鏡測定に基づく物理モデルを適用することによって良好なドライポイント画像を生成することに成功した.
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