ユーザの特性に対して柔軟にサービス内容を変更でき(自己適応化)、かつ運用データから自分自身の構造を組織化できる(自己組織化)知識ベースは、設計効率と保守性に優れたエキスパートシステムの実現を可能にする。本年度は以下の検討結果を得た。 1.知識ベースの自己適応化関係 本研究の自己適応化法は、サービス提供動作の挙動を表すアクション空間とそれに双対なリアクション空間(Causal-networkで表現される)の協調動作を特徴とする。本年度はリアクション空間が一般的なDAG構造の場合に適用される既存の推論アルゴリズムを基礎とした近似アルゴリズムを導出した。情報処理技術者試験対策用学習支援を例とした実験により、本近似アルゴリズムにより数10%の処理速度向上が可能であることがわかった。 2.知識ベースの自己組織化関係 e-ラーニング教材を用いた自己適応化においては、上述のアクション空間がマルチ・ツリー構造で表され、リアクション空間はこのマルチ・ツリーに陽に表されていない因果関係("隠れたパス")を複数付け加えたDAG構造で表されることが多い。本年度はリアクション空間が単連結構造になる場合について、運用データから上述の"隠れたパス"を発見する自己組織化アルゴリズムを求めた。
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