昨年度(平成14年度)は、画像上で車両のような剛体と歩行者のような非剛体を統一的にトラッキングするためのアルゴリズムを開発した。今年度(平成15年度)においては、昨年度開発したアルゴリズムを発展させ、これらの異なる移動物体の詳細な軌跡を自動取得することを可能にし、リアルタイムシステムの試作品として実装した。 一方、異常事象等の状態認識に関しては、主に高速道路における車両交通流画像を対象とした実験を行い、事象認識のアルゴリズムを開発した。この事象認識では、上記トラッキングアルゴリズムより得られる移動物体の詳細な時空間軌跡情報にreasoning(論理推定)手法を適用した挙動の分類を行う。まず、座標クラス記述子によりトラッキング結果から個々の車両の時空間軌跡を抽出する。次に、挙動クラス記述子により時空間軌跡から停止・避走等の挙動の意味を抽出する。 そして最後に、事象クラス記述子により画面中の車両挙動を総合的に解釈し、事故・渋滞等の事象認識を行う。事象認識アルゴリズムは、トラッキング結果→座標クラス記述子→挙動クラス記述子→事象クラス記述子というように信号処理情報から意味情報へとデータの階層構造(Semantic Hierarchy)を構成しており、その階層構築過程は人間の認知過程と親和性が高いものとなっている。 このように、今年度の研究成果としては、車両および歩行者を統一的にトラッキングするアルゴリズムの開発は一定の成果を収めたと思われる。事象認識に関しては、車両画像を対象として挙動を詳細に認識するためのアルゴリズムとして基礎的なものが開発された。この認識アルゴリズムは、車両および歩行者の混合画像に対しても応用可能と考えられ、今後継続してその適用性を検証して行きたい。
|