研究概要 |
本研究は,人間とコンピュータが自然言語を使って対話するシステムを目指している.特にシステム側が特定の知識を扱うメカニズムを持たない自由対話システムの実現を目指している.筆者らの開発している手法では,事例ベースの内容に基づいてシステムの発話が生成されるため,事例ベースをリアルタイムに更新する機能を組み込むことで,ユーザに必要な情報を提供できるという特徴がある.しかし,話題を限定しない自由対話システムでは,事例ベースから現在の対話に沿った応答を検索しなければならないという問題がある. 本研究では,このような自由対話システムにおいて,副詞の利用を考えている.文の意味は,通常,動詞,形容詞,名詞,助詞などによって決定される.これに対して,副詞はユーザの主観的なイメージを反映していると考えられ,特に自由対話システムでは,副詞の使い方が不自然であると違和感の強い応答になってしまう. 本研究では,副詞に関して,時間副詞と程度副詞を扱った.時間副詞は,「今日」のような具体的な時間を示す扱いやすいものではなく,「もう」と「まだ」に代表される,話者の事象の時間に対するとらえ方を表現する時間を表す表現に着目した.これをホーンシュタインのモデル上での時間表現で記述し,対話システムでの実験を行った.程度副詞に関しては,「とても」を取り上げた.「とても」は人間間の会話ではよく現れるが,「とても働いた」などのように「とても」が修飾する形容詞が使われない場合があり,本研究では「とても」が修飾する要素の分析を行った. さらに,メールやチャットなどで現れる副詞的な要素としての顔文字を扱った.顔文字を選択するメカニズムはよく知られていないが,本論文は感情の動きと文の種類から顔文字を推定して出力するメカニズムを開発した.
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