研究概要 |
本年度は,身振り運動の獲得学習モデルについて重点的に検討を行なった. (1)ヒトが複雑な運動を獲得する過程に関する実験. (2)(1)の実験結果に基づく運動獲得学習モデルの検討. (1)複雑な運動軌道を被験者に提示して、その軌道を獲得する過程を観察・計測した.目標の運動時間を指示したとき,ヒトの学習初期段階は,運動時間が長く手先速度の極小点が多数存在するような運動であるが,徐々に,運動時間が目標運動時間に近づき,手先速度の極小点が減少した運動に移行した.教示軌道と生成軌道との誤差は,学習初期段階から後期において大きな変化はなかった. (2)本研究では,上記実験結果に踏まえて,以下の手順で運動パターンを獲得する強化学習に基づいたモデルを提案した.獲得の初期段階では運動距離の短い運動を繰り返すことによって運動パターンを再現する.ここで,短い運動とは始点・終点間の2点間到達運動を指す.短い到達運動(2点間運動)を繰り返すことによって,教示運動パターン全体の形状を学習する,つまり運動パターンを再現するために必要な経由点を獲得する.運動パターンの軌跡をうまく再現できるようになった段階で,より滑らかな運動となるように学習する.より滑らかな運動とは2点間の到達運動ではなく,複数の経由点を通過する運動である.本モデルでは,通過経由点数を徐々に増加させ,最終的には教示軌道の始点から終点まで全体にわたって滑らかな軌道を再現する.本年度は,上記の学習モデルを実現するための第1段階として,2点間到達運動による運動パターンの学習についての計算機実験を行った.
|