(1)腕姿勢は、手先の軌道が決定したとしても無数に存在する。ヒトは何らかの方法・原理によって、腕姿勢についても一意に決定するメカニズムを内在しているはずである。関節角躍度最小規範、トルク変化最小規範、指令トルク変化最小規範について、ヒト腕の3次元運動計画において、終点での腕姿勢が、上記の規範で予測可能であるかを定量的に検討し、指令トルク変化最小規範の可能性を示唆した。 (2)運動パターンを獲得する強化学習に基づいたモデルを提案した。獲得の初期段階では運動距離の短い運動を繰り返すことで運動パターンを再現する。短い運動とは始点・終点間の2点間到達運動を指す。短い到達運動を繰り返すことで、運動パターンを再現するために必要な経由点を獲得する。運動パターンの軌跡をうまく再現できるようになった段階で、より滑らかな運動となるように学習する。より滑らかな運動とは2点間の到達運動ではなく、複数の経由点を通過する運動である。本モデルでは、通過経由点数を徐々に増加させ、最終的には教示軌道の始点から終点まで全体にわたって滑らかな軌道を再現する。シミュレーション結果では、比較的少ない学習試行数で、運動パターンを再現可能な経由点情報を獲得できることが確認できた。また、モデルによるシミュレーション結果をヒトによる行動実験結果と比較した結果、定性的傾向がほぼ一致した。 (3)運動パターンとシンボルとの結びつけを学習するモデルを提案した。コミュニケーションでは、ある運動パターンを相手に示し、それに対する応答の学習によって、その運動パターンのもつ意図・意思(シンボル)が獲得されるものと考え、強化学習アルゴリズムによるモデルを提案した。提案モデルで結び付けの学習が可能であることを示し、実際にAIBOを用いた実験によって、命令に対応する運動パターンの獲得が可能であることを示した。
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