研究概要 |
肺がんの早期発見,早期治療のためには,X線CTによる集団検診が最も有効と考えられる.本研究では,それを実現する上で必須となる自動スクリーニングシステムを開発する. 我々は既に,医師と計算機が並列診断を行う,いわゆるセカンドオピニオン型の診断支援システムを開発している.そこで次の課題として,医師と計算機が直列診断を行う自動スクリーニングシステム,すなわち医師がチェックすべき画像をあらかじめ計算機が10%以下程度に削減するシステムの開発に着手した.このためには計算機による異常病巣検出精度を従来より1桁以上と飛躍的に向上させる必要がある.このための課題として今年度は下記の点に取り組んだ. (1)血管など肺野内組織および病巣の人工モデルの発生とデータベース化 血管を複数の円筒の合成として,また病巣を球のそれぞれ幾何学的モデルで近似し,その寸法,角度,CT値,ならびにそれらの相互配置を変えた数万通りのモデルを発生,蓄積し,これら3次元モデルと入力画像とを比較することにより,入力画像が正常組織の一部であるか,がんであるかを決定するアルゴリズムを開発した. (2)計算アルゴリズムの高速化 上述の3次元モデルと入力画像とのパタンマッチングの手数が膨大なため,当初は1症例あたり約2時間もかかり非現実的であったが,これを1ケタ以上高速化する新規アルゴリズムを開発した. (3)特徴抽出,識別アルゴリズムの改良,追加開発 上記人工モデルングマッチングと並行して従来形の特徴抽出,識別アルゴリズムの改良,追加開発を行った.特に正常組織群の細分化(クラスタリング)アルゴリズムとして,特徴量を主成分分析して得られる第1主成分得点で2分割する手法を樹状に多段階展開する新たなクラスタリング手法を開発し,認識精度の向上をはかった. (4)中規模サンプルによる認識精度の確認実験 異常50症例,正常50症例程度の中規模サンプルを用いて項番(1),(3)の効果判定実験を行い,従来より良好な結果を得た.しかし精度面ではさらに改良を要することが判明し,来年へ持ち越した.
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