帰納論理プログラミング(ILP)の高性能化を実現するために、今年度はILPの予測精度の向上を目指したILPエンジンの開発を行った。まず、現在最も高性能と言われるILPシステムProgolのアルゴリズムをベースにしたものを独自に開発し、深さ優先、幅優先、最良優先といったさまざまな探索方法を取り入れた。その中で、遺伝的アルゴリズムをベースにした新しい探索方法を提案した。この方法は共生進化と呼ばれる遺伝的アルゴリズムの一モデルを用い、その特徴である解の多様性を利用することで、ILPの仮説を複数求めるものである。各々の仮説は予測の際に独立に適用されるが、仮説ごとの適用結果はすべて集められ投票によって最も頻度の高い適用結果(すなわち、多数決の結果)が複数仮説の適用結果として採用される。これを未知事例がどのクラスに分類されるかという分類問題(特に、突然変異性であるかどうかを同定するILPの標準問題)に適用した結果、これまでの研究結果を大幅に越える予測精度を達成することに成功した。この成果は人工知能学会論文誌に記載されている。 次に、ILPを大規模な問題に適用するために、大量テキストデータからの情報検索を行った。この試みは自然言語で与えられた質問応答文を入力すると、この答えをテキストデータから抽出するというもので、情報検索の中では難度の高い問題である。本研究では、質問応答の文例と回答を答え方の事例として与え、それをILPのサンプル入力として答え方のルールベースを事前に生成し、そのルールベースを使って新規の質問応答問題に回答するという方法を提案した。こうしたルールベースは従来人手によって行われたが、本研究ではこ自動化することができ、領域に依存しない汎用な方法として注目を集めた。この成果は情報検索の国際会議にて発表した。
|