研究概要 |
1.本研究の目的は,創造行為における思考過程の構造を把握する目的でデザイン実験を行い,テキストで記述できない動的,視覚的な情報を抽出すること.次に創造行為の分節化を行い,表記方法に関しての手がかりを得ること.さらに聴覚障害者など発話プロトコル法での実験が困難な被験者を対象とした表現過程などに関する実験観察法のための表記デザインを開発することである. 2.研究目的に対し本年度の研究は,第1段階として,(1)創造的思考過程に関する従来の研究を踏まえ,心的イメージ形成過程との関係についての基礎的研究の検証.(2)デザイン思考過程に関する基礎的な研究及び国内外の先端的な研究の動向の調査研究.(3)ここまでの研究成果に基づき,実験観察法により創造的思考過程を把握するための実験.第2段階としては,(4)実験のビデオ記録から得られた創造的思考過程の構造のモデル化.(5)モデルの検証及び創造行為の分節化とその表記方法の分析.(6)テキスト記述が可能な部分と,視覚的な情報としてしか把握できない部分の抽出.(7)ここまでの研究成果から創造的思考過程における動的,視覚的な情報の表記方法に関する考察.これらの二つの段階で計画し,それに基づいて調査研究を実施した.研究経過は順調で計画どおりに進行し,本研究課題を遂行するための中間的な目標に達成できた. 3.研究成果として,デザイン行為における創造的思考過程の特徴を表す視覚的情報についての新たな手がかりと,その動的な構造に関する基礎的な枠組みを得た.これらの知見を基に,検証実験によりさらに精緻な構造の理解を得,その動的構造を表記する方法の構築が次年度の研究に向けての展望である.研究成果に関しては,海外で三つの国際会議,国内では二つの学会で研究分担者との共同で研究発表を行い,研究成果を公表するとともに,他の研究者との情報交換,意見父換を行うことができた.
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