本研究では、地表面が1画素よりも十分に大きな領域(単一クラス)にモザイク状に分割されていると考えることにより、土地被覆分類における種々の問題の見通しが極めて良くなることを示すとともに、このようなモデルに基づく土地被覆分類処理の手順はを以下のように体系化した。この流れにそって、個々のの要素技術の開発と改良を行った。 (1)精密な幾何補正と大気地形効果補正により領域の境界が明瞭な衛星画像を作成する。 (2)補正後の衛星画像に対して領域分割を行ない、領域の内部(純粋画素)と境界(混合画素)に画素を分類する。 (3)純粋画素に対しては領域単位に教師無し分類を行なう。 (4)混合画素に対しては、周りの純粋画素をエンドメンバーとしたカテゴリー分解を行なう。 (5)純粋画素の教師無し分類結果を、既存の土地被覆分類図や現地調査の結果を突き合わせて、最終的な土地被覆分類図を作成する。 幾何補正宅は、直達日射照度のシミュレーション画像と自動的に重ね合わせる最適化手法に加えて、海岸部で適用可能な標本点の海陸の識別の基づく最適化法を開発し、その有効性を検証した。地形効果補正では、C補正法や修正コサイン法をさらに改良した修正C方法を提案した。この方法は物理的なモデルから導出した2つのパラメータを用いて行う簡便なもので、太陽高度が高い場合には精度的にも十分な結果が得られる。 領域分割やクラスタリングの方法ではピラミッドリンキングやK-Mean法などの既存の簡便な方法を適用し、当初予定していたより高度な領域分割やクラスタリング手法を適用するまでにはいたらなかった。今後の課題である。ただし、このような簡便な方法でもエッジ検出によって、純粋画素と混合画素を分けることによってある程度満足できる結果が得られることがわかったことは、本方法を普及させる上で重要な成果ではないかと思っている。 これまでに述べた課題の解決に加えて、本方法を広域の土地被覆分類に適用し、環境動態の解析に役立てたいと考えている。具体的には北上高地の風食荒廃地の問題や白神山地の山崩れの解析を検討する予定である。
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