研究概要 |
本研究では実時間性の高いインターネット上の対話型アプリケーションの性質を調査している.今年度は1.通信遅延の模擬環境の構築 2.ネットワーク上で起きる遅延や更新間隔の大小と,対話性劣化の関係の調査 3.相互予測による実時間対話性確保の実験 4.仮想空間中の輻輳と調節による視覚特性の調査を行っている. ここで1.ではインターネット上の実時間対話環境を想定し,任意の通信環境(帯域幅,遅延,遅延変動,パケット損失等)を模擬できるハードウェア・ソフトウェア環境を構築した.具体的には研究室内にネットワークルータを設置し,そのルータ上に遅延シミュレータソフト,NistNet(米国National Institute of Standards and Technology製)を導入して実現した. 次に2.では仮想環境の操作性・対話性に関して,遅延量,遅延変動,更新間隔の3つの要因が及ぼす影響について情報理論的に考察し,モデル化ならびにその評価実験を検討した[2].すなわち,遅延量x,遅延量の標準偏差y,更新間隔zと一般化されたタスクパフォーマンスの間の関係をモデル化しこれを実際のタスクパフォーマンス実験で評価中である[4]. 更に3.では予測を用いた通信相手との実時間インタラクション手法:PFL (Predictive Feedback Loop)を実装し,模擬遅延のあるネットワーク環境でのタスクパフォーマンス評価実験を行った[1].実験で採用した協調作業においてはユーザーどうしが互いに協力的に作業を遂行することから、位置、速度ならびに加速度のみをパラメータとする上記の力学モデルなどの単純な予測手法でもパフォーマンス向上が見込める(約数十%のパフォーマンス向上が示された)ことを確認した. また4.では輻輳と調節を独立に制御できるATR社製HMD (Head Mounted Display)を用いて仮想空間中の移動物体に対する動的視覚(輻輳,調節の寄与)の調査を行った[3][5].
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