研究概要 |
本年度はADR(紛争に関する助言・斡旋・調停・仲裁)に関して,以下の成果を得た。 1.トラブル事例の検索と調停案の提示 オンラインADRの試行を行っている調停機関を訪問し,一般相談者からの相談内容をメールで受け付けてから,結論を出すまでの相談員の調停の手順を観察した。また,相談事例をおよそ300ほど入手し,これらの事例を分析して,事例を分類するための重要な概念を抽出した。 この概念を利用して,事例集をXML文書として整理し,相談事例から相談結果を推定するためのルール集合を帰納推論の手法で求めた。このルール集合を利用すると,相談者はいちいち相談員を呼ばなくても,自分で相談結果を推定することが出来るので,相談員の負荷を大きく減じることができる。このルール集合を利用した自動相談システムの仕組みを,上記の調停機関のホームページに掲載し,一般相談者に開放している。 2.擬人化エージェントによる調停 オンライン調停において,アニメーションを使うインターフェースを開発し,喜怒哀楽などのアニメーションの表情が調停およぼす心理的な影響が大きいことを確認した。さらに,調停における相談員の一部の役割を擬人化エージェントで自動化するシステムを試作した。この擬人化エージェントは,相談員の表情変化の癖を反映したベイジアンネットを構築し,相談員と同じような表情変化を起こすことによって,一般相談者には違和感を生じさせないことを,被験者を用いた実験で確認した。
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