研究概要 |
1.法令や調停事例の検索技術と利用技術に関して 検索技術として,相談事例,判例,調停事例の3つの検索サブシステムを開発し,調停の途中でさまざまな意思決定を行うための材料を収集することができ,調停の実質的な支援を行うことができることを示した. 相談事例の利用技術として,過去の個々の相談事例の中で特徴的な部分を抽出して特徴ベクトルを作ることによって,助言に至るまでの質問のフローを生成し,調停機関での自動相談システムの構築の負担を軽減するシステムを開発した。 2.擬人化エージェントを使った調停の進行制御技術に関して 人間の代わりに擬人化エージェントが調停を進行させるためには,発言の制御と表情の制御が必要である.発言の選択は,主に過去の類似場面で使われた発言をコピーすることで対処した.表情の選択は,人間の表情表出モデルを心理状態の遷移によるベイジアンネットとして構築する手法を提案し,実験によって,人間の代行が可能であることを示した.また,感情を扱えるように拡張したゲーム理論と表情制御が関連あることを示し,表情表出の戦略について考察した. 3.サイバーADRシステムの実装に関して 上記の研究成果をサイバーADRシステムとして実装した.このシステムは法科大学院において試用を行い,その結果に基づいて仕様の改良を行った.また,このシステムを利用して,模擬調停の事例を収集し,統計的な解析を試みた.その結果,このシステムを使用した調停は,従来の対面方式との調停を比べて,論理的な会話がなされ,より質の高い調停結果が得られることが確認された. 4.調停委員教育への応用に関して サイバーADRシステムで収集した調停の事例ベースを用いて,調停のクラスタリングや,調停員のタイプ分類,という2つの解析を試みた.その結果,事例ベースが調停スキルの教育に有望であることが示された.
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