ITS(高度道路交通システム)の目的のひとつに、ドライバーに危険情報を提供することにより安全性を向上させることが挙げられている。このような情報は数十種類が計画されており、これからもさらに増えていくことが予想される。これらの情報がすべて提供された場合、安全のための情報がかえって危険になることが想像され、そのようなことを回避するためには、車内をひとつの情報空間として捉え、そのための総合的ヒューマンインタフェースの開発が重要である。本研究では、まず、このような情報を普通に提供した場合、ドライバーが認知的過負荷を起こし、情報を認識できなくなるだけでなく、運転作業にも大きな影響を与えることを実験的に証明した。次に本研究では、街の様々なところに情報を取り出すためのマークを取付け、そのマークを見るだけで、その位置に情報がオーバーレイされるシステムを実装し、その有効性を検証した。次にこのシステムでは緊急情報に対応できないことから、危険情報に関してはまず情報を危険個所にオーバーレイして提示し、その後その情報が続いている間、サイドピラー部に取り付けられたランプが点滅することで、ドライバーにさりげなく危険を通知するシステムを実装した。このシステムでは、点滅しているランプを見ることでその情報の内容も確認できる。さらにこれら2つのシステムを統合するために、危険までの時間、情報の優先度、ドライバーの行動などを考慮した情報提供のプライオリティを設定し、それにしたがってシステムの切り替えを行なった。その結果、ドライバーの認知的負荷は大幅に軽滅し、また、情報自体の認識率も向上した。 このように、本研究では、車内をひとつの情報空間として捉え、車載情報機器の総合的ヒューマンインタフェースを構築することで、ドライバーの認知的過負荷を防ぐことに成功した。
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