本研究の目的は、環境問題のように公と私の役割分担だけでは解決のつかない社会的課題に対して関連主体の参画によるコミュニケーションから地域計画の与件を抽出し、地域デザインに橋渡しをする環境計画情報システムのデザイン指針及び運用組織の設計指針を導出することである。いうならば情報と決定権限の乖離という今日的地域課題に対し地域環境計画の論理を再構築することである。本年度は岩手県岩泉町でのヒアリングを基礎にこれまでの環境計画づくりの方法の問題点を抽出し、併せて欧州における研究動向を中心に研究を進めた。その結果、日本の事例から言えることは、ややもすると組織原理が優先してしまうため計画づくりの文脈が閉じた組織の中で個別的に形成され、個別に問題解決行動がとられることが往々にして見られる。その結果、地域全体の計画の文脈が抽象化の域を出ないだけではなく、個別文脈との関連性が不鮮明になっている。また、既存データも現状理解という点ではさることながら、計画の文脈づくりという観点から情報に変換し、文脈と関連づけることが難しい構造になっている。しかしながら環境計画に関わる社会主体が必要としているのは、地域全体の計画文脈であり、データそのものよりも文脈と関連づけられた情報であるといえる。一方海外の動向については英国とデンマークを中心に調査研究を進めたが、同様な問題を抱えており、情報社会における新たな計画システムのあり方を模索していることが明らかになった。今後は情報ネットワーク基盤を利用した環境計画文脈づくりのためのオープン情報システムのプロトタイプ構築と運用の方法について組織的観点からも研究を推進してゆく予定である。
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