本研究の目的は公私の分担だけでは解決のつかない社会的課題に対して、関連主体の参画によるコミュニケーションから地域計画の与件を抽出し、これを地域環境計画に繋げる環境計画情報システムのデザイン指針及び運用組織の設計指針を抽出することである。本年度は文脈抽出の方法として、因果フロー分析の方法をまとめあげ、問題意識から問題を抽出する方法として位置付けた。更にこの部分でネット上のデータや文献、書籍データの関連付けを行うファイル操作をユーザーが自在に行える機能を付け加えた。また、東京の目白、恵比寿、大手町等を対象にインターネット上での実験を行い、まちづくりにおけるネット上でのコミュニケーションから地域計画の文脈を構成する方法の可能性と有効性及び限界についてのある程度の結果が得られた。更にこの様なシステムの有効性は組織まで含めてその運用体制に大きく依存することはいうまでも無いが、この実験を通してこの情報システムが有効に機能するための要件についても分析を行った。何よりも逐次的に蓄積されてゆくデータや情報が参加者にオープンになっていること、自由に意見交換できるコミュニケーションボードが保たれていること、運用組織の継続性が保証されていることが運用上は重要であることが明らかになった。また、英国、北欧を中心にこのアプローチに対する海外の調査を行った。その結果、ネットの有効活用についてはそれぞれに関心を持ってはいるものの、これから実験段階に入るところであることが明らかになった。また、来年度へ向けて情報ネットワーク基盤を整え、実験用のサーバーをセットアップし、プロトタイプの移植作業を行った。
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