研究概要 |
環境の変化は人間の環境認識と意思決定によって引き起こされる。環境認識は千差万別であり、それは人が部分情報しか持ち得ないだけではなく、環境に対する認識の違いによる。更に情報化社会に移行し人々の環境に対する認識内容は一層多様になってきている。 本研究の対象問題は地域計画であるが、情報化社会移行後、計画システム自体の再構成が重要な課題となっている。従来の地域計画では専門家が地域の在り方を定め、その具体化の段階で、地域主体とのネゴシエーションプロセスを通して環境認識の共通基盤が形成されることが一般的であった。環境問題が計画システムの中で主要課題になってからは、計画段階から地域主体の環境認識を計画に組み込む必要性が生じ、計画システム自体が大きく変化してきている。また、その実験的な取りも世界的に行われている。これらの事例を見る限り、多様なデータや情報を累積的に蓄積し,活用してゆく方法については試行錯誤の段階といえる。 本研究では、情報化社会に於ける地域情報システムの理論モデルを構築し、これを具現化するモデルとしてWebを前提としたプロジェクト・オリエンティッド・マルチメディア情報ネットワークの概念を地域計画の方法と対比させながらその要件を整理し、プロトタイプの開発を行い、実験を行った。その結果、地域計画の底流にある複数の地域文脈を明らかにすることと計画内容として何を吸収すべきであるかという計画に関わる意思決定の関わりを明示的に示すことができた。更に情報化社会に適応したオープンな計画システムの在り方の指針を得ることができた。計画づくりのプロセスで集約される膨大なデータや情報そのものが地域の環境資産となりうること、これを確立する方法論の基盤が明らかになった。また、地域情報システムの運用主体の問題等々今後の課題も整理することができた。
|