研究概要 |
少子高齢社会では,高齢者のQOL(Quality of Life:生活の質)の評価,身体機能の訓練が重要課題である。本研究では,高齢者の健康状態や生活に関する情報を無拘束でモニターし,情報ネットワークにより管理する在宅健康管理システムの開発を目的とする。特に,在宅高齢者のQOLを評価する場合,体温や血圧などの生理情報に加え,「会話」「食物摂取」「行動」に関する生体情報を無拘束でモニターし,「こころ」の健康にも配慮することが極めて必要不可欠である。 本年度は,無拘束生体情報センシングシステムを構成する個々のセンシング技術の開発を目的とする。まず,「笑い」は健康に良いことはよく知られているが,これを認識する手法は確立されていない。本研究では,頚部に密着させた音響センサから発話時の声帯振動音を検出するシステムを開発した。「笑い」音声では周期性とその分散が大きな特徴であることを見いだし,日常の会話音声から「笑い」区間を検出する手法を開発した。本法により会話音声から「笑い」音声区間を識別することができた(90%)。次に,脳梗塞などが原因で摂食・嚥下機能障害となった場合,舌運動の機能回復が急務であることから,圧力センサー体型人工口蓋床による舌-口蓋接触圧分布の三次元計測技術を開発した。この技術は小型・高感度の圧カセンサを口蓋面に16個配置し,センサの位置と圧力計測値より舌-口蓋接触圧分布を三次元的に可視化する技術である。また,舌-口蓋接触圧分布より,舌が口蓋面に加える力(本研究では舌力という)を推定する。そして,嚥下時において舌力の中心の軌跡を調べた結果,舌運動と口蓋形状は密接に関係し,口蓋形状の重心をターゲットに舌は力制御を行っていることが示唆され,リハビリテーションへの新たな指標を得ることに成功した。
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