<オンデマンドと広域連携を目指した視覚障害者の学校電子図書室システムに関する研究> 本システムは、盲学校や視力障害センターなどの視覚障害者の教育関連諸機関の図書室を電子化することにより、視覚障害者の学習環境及び読書環境は劇的に変化するのではないかと言う発想の元に、様々な電子図書をアルタイム(オンデマンド)で利用するための、システム化・電子図書の利用方法・学校同士の広域連携のための通信手段などについて研究を行った。 (1)現状調査:学校図書室の現状を、司書の配置・電子図書の導入状況・図書管理システムなど図書室の電子化が進行中の現状を精査した。(2)電子図書の状況:一般図書の電子図書・電子点字図書・電子録音図書の3種について現状の規格の調査と視覚障害者の利用状況について検討した。1)最も電子化が進む電子録音図書ではDAISYと呼ばれる新しい電子録音図書規格以外に、携帯型電子MP3プレイヤー等の存在が注目されている。2)電子点字図書では、携帯型の点字ディスプレイで電子点字データを触読する傾向が多く散見されるが、点字への依存性は低くなりつつある。3)一般文字の電子図書では携帯電話を利用した読書など、パーソナルメディアを利用してユビキタス的な利用が増加しているが、中心的な利用はノートパソコンであること等が判明した。(3)ネットワーク通信実験:広域連携を目指して、各学校間でのデータの相互利用を目指して通信実験を行った。年度ごとに学校間の通信速度は高速化している状況が伺えたが、受信が出来ても送信が出来ないファイアウォールの設定が問題となった。(4)著作権:著作権法の改正により、視覚障害者が教育上利用する範囲での著作権問題は非常に少ないことが判明した。(5)電子図書室システムの開発:専用サーバを利用する電子図書室は学校現場では運用上不可能であり簡易型システムが求められている。また、電子辞書類の要望は極めて高いが、様々な電子図書類に関しては小・中・高等部などの学年間で要望に大きな差異があることが示唆された。 以上から電子図書室に関する教育現場の要望は非常に大きいが、システム構築や運用に関して非常に多くの問題があり、簡易に利用できるシステムが求められていることが示唆された。
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