病院経営に関する従来からの定説は、(1)たくさんの診療科を揃え、設備が整りた大規模病院ほど、患者の評価は高くなる (2)したがって、大病院ほど患者を集めやすく、病院経営が安定する というものであった。このため、各病院はそれぞれ自己完結型の大病院を目指してきた。 このような発想には、競合する近隣病院の影響、患者の病院へのアクセサビリテイー(通院や入院の便利性)、診療科の差異等が全く考慮されていない。包括医療制度の下では、各病院はマーケティング的発想を取り入れ、病院の魅力を構成する要因を的確に捉え、病院経営に反映させねばならない。本研究は(1)横須賀-三浦の第2次医療圏に位置する大規模病院の患者動向の調査、(2)患者の病院選択行動の解明とモデル構築、(3)診療科の差異が患者の受診活動に与える影響、(4)開設診療科と病院の魅力度、(5)患者の病院選択行動に基づく病院の適正配置等を研究し、病院経営のあるべき姿を求めるものである。 本年度は、横須賀-三浦の第2次医療圏及び隣接する横浜市南部地域に存在する国家公務員共済組合傘下の旧令病院の3病院について、年間の外来・入院患者の全データを診療科別に収集し、個々の患者の住所、年齢、受診病院名、受診診療科、受診回数等のデータベースを作成し、その整理・分析を開始したところである。これと並行して、ハフモデルを参考に、患者の病院選択行動を説明できるモデルを作成するための検討をおこなった。
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