本研究では、粉じん爆発現象の科学的現象解明をおこない、粉じん爆発に対する安全管理手法の高度化に資する情報を得ることを目的として、実験およびモデル化を主体とした研究を3年計画でおこなっている。2年目の平成15年度は、平成14年度に制作した実験システムを用いて、浮遊粉じん中を伝ぱする火炎の構造および火炎伝ぱ機構について詳細な解析をおこなった。 先年度に引き続き、可燃性粉じんとしてステアリン酸を用いて実験・結果解析をおこなった。今年度は可視域でのムービー画像の撮影のみでなく、温度測定を同時におこなった。測定した温度分布より、燃焼反応の開始点を決めることができ、火炎構造が明確になる。さらに温度測定から求めた火炎構造と可視域のムービー画像との対応をとることもできる。 結果として、火炎の先端である燃焼反応の開始位置は、可視域の観察で発光部として認識される火炎先端よりも、数mm前方にあることがわかった。可視域で発光が認められる部分よりさらに前方で燃焼反応が開始されていることを示唆している。これは、火炎構造を知る上で重要な知見であるとともに、このような火炎の構造を解析するためには、今回用いた程度の感度の可視域の観察のみでは不十分であることを示している。 火炎が連続的に伝ぱしているという先年度の結果と考え合わせると、今回の可視域の観察系で認識される火炎の前方に本当の火炎先端があり、それが連続的に伝ぱしているものと考えられる。この火炎先端は、小さな燃料粒子が高速にガス化して空気と混合してできた可燃性予混合気中を、予混合火炎が伝ぱしていると推定できる。 以上、今年度は火炎構造や火炎伝ぱ機構を解明する上で有用な結果を得ることができた。次年度は、詳細な観察および粉じんの条件を変化させた実験などを実施し、火炎構造および火炎伝ぱ機構の解明をおこない、粉じん爆発時の火炎伝ぱのモデル化を進める予定である。
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