研究概要 |
本年度の研究実施計画に基づき,以下のような研究を行いました.(1)日本の物流制度に関する調査および分析,(2)外国の物流現状に関する調査および分析,(3)静脈物流および販売店の在庫を考慮した配送計画モデルおよびその解法.まず,日本の物流制度に関する調査および分析においては,これまで明らかになっていない物流規制緩和の影響について調査分析を行い,主に90年から施行された物流2法に着眼し,全要素生産性指標を測定することによって,マイナス基調にあった全要素生産性の伸びが1991年にプラスに転じていることが,価格調整の仕方を変えた場合にも共通して認められていることを定量的に示した.また,トラック輸送市場における荷主企業の物流コストが年々下がっている事実について,その原因を究明するために,資本投入量,労働投入量,規制緩和要因を独立変数とした回帰モデルを構築して定量的な分析を行った結果,バブル崩壊の景気要因を除いても規制緩和が物流コストの削減に貢献していることが分かった.次に,外国における物流現状に関する調査および分析においては,日本の製造業が多く進出している中国を中心に調査を行い,中国では現在物流在庫の保有期間が51日,小売在庫保有期間が34日,輸送中の商品破損率が2%以上で各企業が高賃金で専門の輸送品質検査員を雇用していること,総輸送量中74%輸送責任は荷主が負っておりCross-Dockingなど現代物流システムの導入は困難であること,物流サービス水準が低く57%の製造企業および38%の商業企業が新しい高品質の物流企業を探していることなどが分かり,日本の"創"と中国の"造"の協力において物流が大きな問題になっていることが分かった.最後に,静脈物流および販売店の在庫を考慮した配送計画モデルおよびその解法においては,多期間在庫配送計画モデル(IRP)をもとに,静脈物流,すなわちピッキングを考慮したモデルに拡張を行い,発見的解法を開発した.この研究の成果は論文にまとめ,学術雑誌に投稿中である.((1)A New Approach in Integrating Inventory and Vehicle Routing Decisions for the Period Traveling Salesman Problem, Journal of Computers and Industrial Engineeringに投稿,(2)An Integrated Model of the Period Vehicle Routing Problems for the Reverse Logistics, Journal of Computers and Operations Researchに投稿予定,(3)静脈物流を考慮した多期間配送計画問題,日本経営工学会誌に投稿予定)また,これらの研究に関連して,物流需要予測手法,顧客の許容納期の延長と静脈物流,プロジェクトスケジューリングなど周辺研究も同時に行い,成果を国際会議や学術雑誌に発表した(研究発表を参照)
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