研究概要 |
(1)動的図解手法機能面の強化:ペトリネットシミュレータは,ネット表現性とそのプレースの場所性から,空間の動的図解機能に優れている.まず,取り扱い可能なプレースの表示形状とプレースの機能型を多様化した.前者は記述要素区分を意識化させ,図解の一瞥性を強化し,後者は時空間の重層的図解力を強化する.次に,ネットの表示・非表示機能やドラッグ機能を,SdataとNdataを活用し連携化させることで,背景画像上でのネット構築力を強化した.この研究は,応用時の空間の動的図解に際してリアリティを与えるとともに,動的図解手法性が,問題認識→代替案発想→代替案評価→フィードバックという計画プロセスの動的展開性に対応するという展望を開くものとなった. (2)バス優先策への応用研究:(1)で強化したプレースの機能型を活用し,空間の空型"-1",一般車占有型"-2",およびバス占有型"-3"として,道路の時空間を重層的にペトリネット図解し,混在流のシミュレーションネットを開発し,金沢市都心軸での実測交通流による再現性検証を行い,方向別断面交通量で5〜8%の誤差内という結果を得た.しかし,バス優先策の一つである専用レーン運用時のシミュレーションでは,一般車の走行性低下が過大となり,その取り扱い法が課題として残っている.ITSによる支援策については,バス優先信号のネット開発を行ったところであり,設置場所の選定と適用化が課題となっている. (3)避難シミュレーションへの応用研究:(1)で強化した背景画像上でのネット構築法を活用し,まず,建物内空間の避難計画シナリオをペトリネット図解し,煙拡散とその感知による防火シャッタの閉鎖を組み込んだ避難流のシミュレーションネットを開発した.次に,その背景画像上で避難阻害要因の探索を行い,その組み入れを(1)の動的展開法を用いて試み,防災計画への応用の基本枠組みの整理と実行性を確認した.一方,CAでは取り扱える広場空間での行動のペトリネット記述法に課題が残ることが判った.
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