研究概要 |
2000年,2001年の企業調査における企業経営者の環境経営意識および実践結果を,経営者の出自や株主,経営成績や財政状態,情報開示などの認識や実態から説明する要因分析を行った。これによると測定,開示,評価行動に積極的あるいは敏感な企業ほど環境経営に対する意識や実行に関し高いレベルにあるということがわかった。 まず,環境経営実践には資本調達市場で違いがあり,キャピタルゲインを求める多くの店頭市場企業株主は,目の前の成長に直接結びつかない環境負荷削減投資を好まないが,安定的な配当を求める多くの東証1部上場企業株主は,将来の収益性を阻害する環境負荷要因に対してそれを削減する投資や活動を歓迎すると考えられる。 さらに,研究開発投資が大きい,業界でも先端的な活動を行っている企業は環境経営に積極的である。また,グリーン購入を進めていくと仕入先は限定されてくるので,環境経営が広まるほど仕入先が限定される傾向にある。 この2点以外は,企業活動の測定行動と開示行動と外部の評価行動にかかわる変数が環境経営を促進する要因として挙げられた。まず,測定行動としての会計行動の独自性が大きい,測定行動そのものに意を用いている企業は環境経営に積極的である。また,監査人の影響が大きい企業は環境経営に積極的で,社外の監査人が健全な活動を通して,環境経営に関し実際に教育的役割を果たしている可能性がうかがえる。さらに開示行動そのものである,IR活動と財務情報のネット開示も要因としての関連性が高かった。評価の面では社債格付が要因としてあげられた。社債格付は,外部評価行動の中でも直接調達資本コストに反映するので,企業も無関心ではいられない。この他に設備投資の耐用年数が法定より短い期間で償却する企業ほど環境経営意識も実行も高レベルになる傾向にある。 これらの結果に基づき,新たに環境経営の意識と開示に関する企業調査項目を設定し,企業調査表を作成した。
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