研究概要 |
昨年度に引き続き,環境報告書,サステナビリティ報告書などの企業の開示情報の収集をおこなった。環境経営意識との対比から,環境報告書等の内容のうち特に重要であると認識された,経営最高責任者の緒言と環境会計情報とをデータベース化した。 また,銀行・保険・金融業を除く日本の株式市場で公開している国内企業に対して実施したアンケート調査の集計をおこなった。分析可能な情報が収集できた調査企業667社を,東証一部上場,新興市場上場,その他市場上場それぞれについての製造業と非製造業との6企業群に分割した。 環境経営に対する意識と取り組みという観点から指標を作成した。それらは(1)環境経営の実践を表す指標,(2)環境経営への意識の高さを表す指標,(3)環境対策に関する情報の外部開示への積極性を表す指標,(4)環境対策に関する情報の外部からの要求の強さを表す指標,の4つに大別される。 それぞれに関して,企業群を統計的に比較すると,(1)どの市場においても,製造業企業群の方が,非製造業企業群より環境経営の実践は有意に積極的であり進んでいる。また,環境対策に関する情報の外部からの要求は有意に強い。(2)製造業企業群に限ると,環境対策に関する情報の外部からの要求は東証一部企業群に続いて新興市場企業群に対して強く,その他市場企業群に対しては相対的に弱くなっている。(3)とくに東証一部製造業企業群は,環境経営の実践では他群と比較して有意に優っている。(4)東証一部および新興市場では,製造業企業群の方が,非製造業企業群より環境経営への意識は有意に高く,環境対策に関する情報の外部開示は有意に積極的である。(5)とくに東証一部製造業企業群は,環境経営への意識,環境対策に関する情報の外部開示が他群と比較して有意に高く積極的になっている。 環境経営に対する意識に結びつく外部からの要求の重要性を認識させる結果が得られた。
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