研究概要 |
企業の環境パフォーマンスと経済パフォーマンスとの比較を中心に分析評価をおこなった。 環境省の「環境会計ガイドライン」が2005年に改定された。これに示される環境会計の普及拡大に伴い,開示圧力が増してきた環境パフォーマンスの経済パフォーマンスとの統合手法を比較検討し,その問題点が,統合と換算の二点にあることを示した。 また,近年企業に収益をもたらす経営資源としての無形資産が重視されるようになったが,無形資産の中でも顧客が保有するブランド価値に,企業の環境経営がどの程度の影響をもたらすのかを検証した。まず企業側のブランドに対する意識と環境経営への意識との関連性を見た。さらに,経済産業省のブランド価値モデルを基礎にした企業ブランド評価値を作成し,一般に広く認識された開示情報としての日本経済新聞社の環境経営度に基づいて作成した評価値との関連性を見た。この結果,パフォーマンスが企業のブランド価値という経済パフォーマンスに先行するといえる可能性を見出すことができた。 さらに,環境報告書から,社会環境報告書,持続可能性報告書,CSR報告書などに進化した情報開示パフォーマンスに現れたイノベーションも業績との関連性が見出される。それらに開示された経営者の言語行為の分析評価値についても以後の業績変化との関連がみられ,環境経営報告書に現れる経営意識のイノベーションが,本研究でおこなわれた調査で指摘された「環境負荷削減に積極的な経営者は長期的視野にたって経営がおこなえる優れた経営者である」ことがある程度認められる結果となった。
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